「ウイルス感染と神経系の関係」
▼以下、参考文献[1] [2]より
・神経伝達物質(*2)の受容体が免疫細胞(*3)の表面にあること、さらにその細胞に情報を伝えることができる新しい神経伝達物質が発見された[1]。
・ストレスなどの心理的要因により脳内から神経伝達物質が放出され、それが免疫反応に影響を及ぼす。また、それと同時に免疫系から放出された化学物質が逆に脳に影響を及ぼす(病気になると、憂鬱な気分になったり、眠くなったりして引き籠る等)[1]。
・リンパ系神経支配に関する多くの研究は、神経活動の急激な変化がリンパ系器官内のノルアドレナリン量を変化させる主なメカニズムを構成すると推定している[2]。
そこで、本日は免疫系と神経系の関係を理解するために必要な基礎知識を共有させていただきたいと思います。
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1:ヒトの免疫系に関する基礎知識
2:生体防御反応=白血球が担当
3:白血球と自律神経
4:ウイルス感染と自律神経
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1:ヒトの免疫系に関する基礎知識
=重層的な防御体制
●第一関門
=上皮
・病原体(細菌やウイルスなど)が生体に侵入するのを防ぐ
↓
●第二関門
=自然免疫
=生まれつき備わっている免疫
・体内に侵入した病原体を一様に感知して対応し、排除する
↓
●第三関門
=獲得免疫
=後天的に備わる免疫
・体内に侵入した病原体毎に攻撃方法を習得して記憶し(抗体をつくる)、次に同じ病原体が侵入してきたときに一早く対処する
2:生体防御反応=白血球が担当
白血球は大きく分けると3種の免疫細胞に分けられます。
・リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)
・単球(マクロファージ、樹状細胞)
・顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)
3:白血球と自律神経
白血球中の顆粒球とリンパ球は自律神経の支配を受けて比率が調節されます。
・顆粒球=交感神経支配=主に細菌処理をする
・リンパ球=副交感神経支配=主に抗体を利用した免疫反応によりウイルス等を処理する
季節や環境に伴って、自律神経の働きも変化します。例えば、冬から春に変化するときは寒い冬の時期の交感神経優位から副交感神経優位に移行するため、白血球の比率もリンパ球の比率が上がる傾向になります(→リンパ球の過剰反応によりアレルギー症状が多くなる)。
4:ウイルス感染と自律神経
下記は風邪ウイルスに感染して風邪症状が発症してから治癒するまでの自律神経と身体症状の推移です。
→ウイルス感染にする
→リンパ球が増加
→副交感神経による症状が出る
(脈が遅くなり怠くなる・鼻水が沢山でてくる・発熱する)
→交感神経による症状が出る
(鼻水が硬くなる/化膿性炎症)
→治癒
<用語解説>
(*1)精神神経免疫学
・1975年にアメリカ・ニューヨーク州ロチェスター大学の心理学者ロバート・アデル氏とニコラス・コーエン氏により初めて使われた言葉で以後広く評価されている研究領域
・脳と免疫系との相互作用を研究する精神神経医学/心身医学の一領域(プラセボ効果や心身症などがこの分野に含まれる)
(*2)神経伝達物質
=脳内の化学物質
・神経細胞(ニューロン)と標的細胞との間で信号を伝達する
例)セロトニン、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、アセチルコリン
(*3)免疫細胞
=体に侵入してきた病原体と戦う細胞
→リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)、樹状細胞、マクロファージ
<参考文献>
[1]講談社『「病は気から」を科学する』ジョー・マーチャント (著), 服部 由美 (翻訳)
[2]Social Stress Enhances Sympathetic Innervation of Primate Lymph Nodes: Mechanisms and Implications for Viral Pathogenesis
https://www.jneurosci.org/content/27/33/8857
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2021年12月08日 20:00