これからの時代を発展的に生きるためのキーワード 『ダイバーシティ&インクルージョン』
TRTAの豪州オイルマッサージ国家資格取得コースカリキュラムは、専門理論科目、実技科目、実務系科目、臨床実習で構成され、体系的な学びによりプロフェッショナルとして活躍するための基礎力と応用力がつけられるようデザインされています。
今回のブログでは、実務系科目の一つである「ダイバーシティ(多様性)」の授業内容や、ダイバーシティに関する考察を共有させていただきたいと思います。
ここ10年程で、日本社会でもダイバーシティの重要性が認識されるようになってきました。その背景には、様々な分野でのグローバル化や世の中の変化により、異なる文化・価値観を持つ人たちと協働・共存することが求められるようになったことがあります。
ダイバーシティの授業では、概念を理解するための講義と、「マッサージセラピストとして/社会人として、ダイバーシティを個人および職場でどのように実践に落とし込んでいくか」等をディスカッションしていきます。
● ダイバーシティの歴史
「ダイバーシティ」という言葉は1980年代にアメリカで生まれ、世界に広まったといわれています。企業の競争力を高める人事戦略として「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包含性)」という考え方が生まれたことが始まりです。
日本においては、ダイバーシティの考え方が認識され始めたのは1980年代半ば頃からといわれています。1985年「男女雇用機会均等法」および1999年「男女共同参画社会基本法」の制定により、職場における男女差別が是正されました。
それまでは、女性差別や人種差別が横行しており、同等の雇用機会や昇進機会が提供されることがない状態でしたが、このダイバーシティ&インクルージョンの考え方が次第に社会に広まり支持されるようになるにつれて、様々な分野で取り組みの必要性が高まっています。
● ダイバーシティの認識
国や企業・組織におけるダイバーシティとは、ライフスタイル・宗教・価値観・性別・物の見方・分析の仕方..などの違いがある人々がそのコミュニティに存在することを意味します。
近年、日本社会でもダイバーシティが重要視されていますが、実際はその認識がまだまだ定着しておらず、実生活や仕事で上手く実践できていない状況も少なくないようです。
実際に参加した受講生にダイバーシティの認識について話を聞いてみると、所属している企業で「ダイバーシティ研修」などが取り入れられている受講生はダイバーシティへの認識がありましたが、そうでない受講生は「聞いたことはあるけど、よくわからない」「なんとなくイメージはあるがボヤッとしている」という状況でした。
日本国内におけるダイバーシティの実践はまだ黎明期で、どこの企業も思考錯誤しながら実践している状況なのではないかと思います。
● ダイバーシティ&インクルージョンは優しい概念
ダイバーシティ&インクルージョンとは、多様性を包含した状態を言います(国や企業でいうと、多様な個性を包含している状態)。
ダイバーシティの概念が浸透していなかった時代は、多数派から外れた個性が排除されがちでした。価値観や生き方まで「普通」という型があり、それとは違う価値観や生き方をしている人は「変わってる」と批評されましたが、多様性の時代は(人に迷惑/害を与えるものは除いて)全ての個性が尊重される時代。ダイバーシティは優しい概念であるといえると思います。
多様性の概念を理解して実践できると、自分にも他人にも寛容になれて、精神的にも自由でいられます。
「寛容」というと何でも許すというようなニュアンスにも捉えられますが、 どちらかというと、「自分もOK、あなたもOK」「自分に対しても責めない、相手に対しても責めない」というニュアンスで解釈してます。
● NO INTERFERENCE , NO JUDGEMENT
:相手に干渉しなければ、相手をジャッジすることがなくなる
ダイバーシティの実践において、必要なマインドセットの一つに「ノージャッジメント:NO JUDGEMENT」つまり「批評しない/裁かない」がありますが、批評/ジャッジの一方手前で相手の価値観・嗜好・考え方を干渉せずに放っておけば、相手をジャッジすることもなくなります。「そういう考え方もあるんですね」で終わり、それ以上は相手に入り込まないとうイメージです。
人間誰しもノージャッジメントを完璧に実践することは難しいですが(神ではないので)、日常から意識して心がけることで、自分も他人もより心地よい状態でいられるのではないかと思います。
例えば、自己責任で何かにチャレンジして失敗したとしても、それについて干渉されない状態であれば、アレコレ批評されたり馬鹿にされたりすることがありません。過干渉でジャッジメンタルな社会は人々を萎縮させます。「これやりたいな。でも、こんなことしたら馬鹿にされるかな」という心理状態が生まれやすくなるなど、自由や可能性がどんどん狭められてしまいます。
● 良い干渉・悪い干渉
「干渉」には、「良い干渉」と「悪い干渉」があると考えます。
「良い干渉」
=相手を思いやって気遣う愛情から生まれた行為
→「ちゃんと休養を取ってますか?」等、相手にとって負担がない/ストレスや不快感を与えない程度の干渉
「悪い干渉」
=相手の嗜好/価値観について、口に出して批判/批評したり噂話をしたりする行為
良い干渉と悪い干渉の違いは、一言でいうと、「相手への思いやり・愛情」から生まれているか否かなのではないかと思います。
日本社会(特に地方コミュニティ等)は、ご近所さんへの思いやりから干渉的になることがあると思います。そういった干渉については、双方でコミュニケーションをとってお互いが負担にならない距離感を見つけていけば良いのではないかと思います。これは「境界線(バウンダリー)」の概念も関連してきます。ダイバーシティの授業では、この概念も学んでいきます。
● 授業参加者からのコメント
〇受講生Tさん:
「ダイバーシティの授業でオーストラリアらしい柔軟な考え方や価値観など学べて本当に嬉しかったです。哲学的な感覚ですね、今までの考えていたことが点と点で繋がった感じですね。技術に関してもこうでなければならないということがマニュアル的な考えで無く、個性や人を尊重する多様な考え方などセラピストとしても十分に活かされています。」
〇受講生Sさん:
「授業で多くのディスカッションができたことは本当に良かったです。自分にとってここまで人と話し合うことは大人でも子供でもなかった気がします。知らなかったことやもっと人の価値観を知ってみようと思いました。それについてどう思っているんだろうとか、、最終的には自分と向き合う大切な時間ができました。」
授業は、毎回新しい気づきや発見、そして大切な学びがあります。
今回のダイバーシティの授業も、ディスカッションを通じて、様々な意見に触れることができ、受講生の視野が拡がっていくことを実感しました。そして講師もディスカッションからいつも学ばせていただいています。
TRTAはこれからも、受講生一人ひとりの“個性を尊重”し、“視野が広がる”授業を通じて、これからの時代を生き抜いていくために必要な感性や思考力を磨くことができる教育を提供できるよう精進して参ります。引き続きどうぞよろしくおねがいいたします。