オーストラリアのマッサージ文化と健康意識
TRTA 東京リメディアルセラピーアカデミーは、オーストラリア政府認定教育機関 MSQ(Massage Schools of Queensland)と2015年より提携し、日本国内でオーストラリアのオイルマッサージ国家資格が取得できるコースを開催しております。
コースでは、専門理論や技術だけでなく、オーストラリアの文化や国民の健康意識・価値観にふれる機会もありますが、参加される受講生の多くは、異文化や異なる価値観から新たな視点を得て、自身の健康増進や仕事/ライフスタイルの発展に役立てているようです。
そこで今回のブログでは、「オーストラリアと日本のマッサージ文化の違い」についてお伝えしたいと思います。
●マッサージ文化が根付いているオーストラリア
世界有数の自然療法大国として知られるオーストラリアでは、老若男女問わずマッサージセラピーを習慣的に受ける文化があります。それは社会制度と国民の健康意識が関係しています。
まず社会制度について、オーストラリアでは国民健康保険と民間医療保険(任意加入)が存在し、各保険は政府の指針によって適用される範囲が定められています。その中でマッサージセラピーの保険適用は民間保険となり、心身の不調和/不具合の解消や怪我の治療などで利用されます。
民間医療保険は年間の利用限度額が限られており(例えば、各種療法の保険適用限度額600ドル/年、等)、また保険に加入していない場合は保険適用による施術を受けることはできません。しかし、そういった自然療法が利用できる民間医療保険制度が社会の制度としてあることが、国民の健康意識や予防的にマッサージを受ける意識向上の後押しになっているのは確かです。
そして健康意識については、スポーツ大国であることを背景に、怪我や不具合が起きる前にカラダのメンテナンスやコンディションを整えるといった健康意識を持つ方が多く、自分自身のカラダを守るために習慣的にマッサージセラピーを受けるという発想がベースにあります。その発想は保険を利用しない場合でも同様です。
●日本国内におけるマッサージセラピー利用者の傾向
それでは日本における同じ分野はどうでしょうか。 国内では医療類似行為として厚生労働省が所轄している整骨院や鍼灸院で有国家資格者が施術を行います。利用する場面は、怪我や故障が発生してから通院するといった流れで、保険の適用には予防という概念は殆どありません。又、民間のサロンや整体院は、リラクゼーションを目的として疲弊したカラダをリラックスしたい、カラダの〇〇(部位)がつらいなど、多くの方は発生事後に行動します。利用者はどちらかというと「辛くなってからマッサージを受ける」という方がまだ多いようです。
昨今、日本国内のヘルスケア領域においても「予防」や「未病」といった言葉が認識されつつあり、以前に比べると予防的にマッサージを受ける人も増えてきていますが、諸外国に比べると相対的に健康に対する予防意識がまだまだ低いのが現状です。
●健康意識が高い人ほど能動的にマッサージセラピーを受ける
各国大使館があり多くの外国人が居住する港区麻布十番のリラクゼーションサロンでお客様の利用傾向を聞く機会がありました。今では、そのお店の全体の利用者の約4~5割は外国人だそうで、その多くの方がカラダのコンディションを整えることや予防としてのメンテンナンスを目的としているそうです。また、マッサージを受ける姿勢も能動的で、当日の身体の状況に則した施術内容を担当セラピストに具体的にリクエストする人も多いとのことです。また施術中にもセラピストに対して技術のフィードバックをするそうです。セラピスト任せで施術を受けるのではなく、クライアント自身も施術に参加する姿勢は、普段から自分の身体や健康と向き合う意識が高いことの現れだと思います。
一方で、日本人の控えめな国民性から、お店側に気を使って施術に対する要望があっても口にしないというケースもあるかと思います。そういった観点から考えると、日本人のお客様に施術サービスを提供するセラピストは、お客様がフィードバックをしやすい雰囲気づくりやコミュニケーションを図ることも意識していきたい点だと思います。
●日本国内でマッサージセラピー領域に従事する際に意識していきたいこと
前述のように、日本国内における健康予防意識は高まってはいるものの、諸外国に比べると全体的に受け身/後手です。マッサージセラピー領域に従事するセラピストも、こういった国内外の状況を踏まえて、お客様にわかりやすく身体や健康に関する情報をお伝えしていくなど、健康/予防に関する教育をしていく意識を持つことも大切であると考えます。自分の健康に対して、主体的に取り組む人が増えると健康で元気な人がもっと増えて、社会がより明るくなると思います。
私たちはオーストラリアのマッサージセラピー教育を提供するなかで、技術や専門理論の指導だけに留まらず、社会における私たちの役割も常に考えています。これからも、教育を通じて社会への貢献に精進して参ります。引き続きどうぞよろしくおねがいいたします。